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森の路はずれ2009ギャルゲー総決算


 ヤクザ映画なんて今はもう流行らないけれど、僕にとって金字塔は「冬の華」(東映・1978年)。母親にしつこく言われ僕自身もまた観たいとずっとレンタルショップで探してきたものの、見つからずじまい。いい加減DVD買っちゃおうかなーと思ってた矢先、たまたま目についた「名作」コーナーにちゃっかりあっちゃいまして!(またそんなんかよ)なるほどそうか「名作」か、言われてみれば確かにそうだ。高倉健さんだもんな、「極道」コーナーにはないよな。というかもっと早く気づこうよ・・・。気づくことが遅いことに関しては益々自信を深めてる私であります。

 健さんは"あしながおじさん"ヤクザで殺し屋の加納秀次役、 池上季実子が女子高生・松岡洋子役というのは当時でも無理があるよね。ソフトバンクのしゃべる犬が若い! クロード・チアリの索漠としたギターサウンドと、チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番(アシュケナージ/ロリン・マゼール/ロンドン響)の芳醇な壮絶感が、切った張ったの世界にあって健さんの孤高で哀切極まる精神を美しく描いて胸に迫ります。濃厚な昭和の匂いも味わい深い。特に、洋子を下っ端のチンピラに"とられてた"ことを知ってしまった秀次の振る舞いがたまりません。

091221.jpg 組のために殺した男の娘で、服役中も部下に命じ養わせていた洋子は今日美しく成長し、ひと目見て惹かれるんだけども会うことは許されないと秀次は思ってる。それでもやっぱり彼女が気になり"ストーキング"していると、彼女の生活をじかに面倒みていた使い走りのチンピラ・竹田乙彦(三浦洋一)と、夜の噴水公園で"チュー"するのを目撃しちゃうんですね・・・・・・。耳にこびりつく噴水の水音、暗がりのなか、健さんの瞳だけが浮かんでいる。場面は変わって高架下の場末、秀次は関西から乗り込んできたやくざと肩がぶつかり、連中に因縁をつけられます。

 しかしどこ吹く風とばかり煙草を取り出す秀次。火をつけようとして、相手に捨てられ、2本目に火をつけようとして、捨てられ彼は勃然と殴りかかる。常の寡黙さでしかし容赦なく叩き飛ばし、蹴りつけ、そして顔面を踏み潰して相手はあっさり息絶える。仲間は突然のことに助太刀どころか腰を抜かして、さっきの威勢はどこへやら壁際に後退ってて。彼らを一瞥し、秀次は立ち去ります。そのあと物語は抜き差しならなくなるんですけど、僕はこのシーンを観るたび凄すぎて笑ってしまうんです。「人が死んでるのに不謹慎よ」って母に怒られるくらい。

 だって、惚れた女をとられた腹いせに人殺しちゃうんですよ? ふだんギャルゲー主人公のヘタレっぷりとか寝取られ属性がどうとか考えてる僕がまるで馬鹿らしくなっちゃって、甘っちょろくて、ああ、2009年も残り10日になっちゃったけれどもう新作ギャルゲーはプレイできないなって、なんとなく思ったのでした。かけがえのない恋愛というのがあっていいとは思うけれど、かけがえのない恋愛を奪われたとき失うもののかけがえのなさも均しく描かなければ(その決意が感じられなければ)、かけがえのない恋愛とはそもそも成立しえないんじゃないか――。

 2009年も終わろうとしている今、僕はPS2版「いつか、届く、あの空に。」をちまちまプレイしていて、唯井ふたみと年を越すことになりそうです。もちろんPC版はコンプリートしてあるのだけれど、今回PS2移植版を買って、彼女の音声だけONにしてリプレイしています。やはり僕にとって本当に好きなギャルゲーとは、一度売って買い戻すギャルゲー。言葉というものを意味よりも感傷やふんいきに落としこんで、衒学的で丁重なメルヘンをファンシーに描述するコテコテの"自分読み聞かせ"に、通う意味があるとするなら、それは唯井ふたみの肉声だからです。

 「かけがえのない恋愛を奪われたとき失うもののかけがえのなさ」という意味で、今年「Aster」という作品に出会えたことはぞんがい幸運だったのかもしれません。パッケージに封入されてたアンケート葉書が宛所不明で戻ってきちゃったのも、そういう意味では筋が通っていた。残念ですけど。物語としては感想にも書いたとおり、鼻白む点や物足りない部分が多々見受けられた。でも作品として、そのテーマは決して悪くない。肉の質はともかく骨付きであり、車の中のBGMは今でも「Aster」のサントラだったりするし、やや深めのところで印象に残りました。

 誰もが心の奥底に抱えてる「失うもののかけがえのなさ」を、喪失の事実から再生への過程を諧謔的に、タオルの端っこ的に物語り、独特の世界(メタ)認識と多重構造がいささか無遠慮で、お節介で、やさしかった「俺たちに翼はない」。辛いことがあったらまたプレイしたいけれど、まだそんなにリプレイしてないから僕は幸せなんだろう。個性が光る多彩な男性声優陣も実に良かった。軽部狩男やLR2001、DJコンドルなどは正味な話ヒロインよりよっぽと魅力的で、炭酸が抜けて常温のファンタみたいな西又絵もあり、ギャルゲーというより俺たちゲー。

 そうそう。年初にプレイした「MapleColors2」はそういう"もったいぶった"部分はなく、お話として実にわかりやすく、ゲームとして手軽で手堅い優れたエンターテイメント作品でした。しかし、「俺つば」後意を決して取り組んだ「Fate/Stay night」はそういう意味で真逆といっていいエンターテイメント。アニメから入り、あまつさえギャルゲーを主人公に移入して楽しむタイプの僕は、その完膚なき世界観、あまりに持ち重りのする作品性にオーパーフローを起こしてしまいました。その辺りの事情を白状したエントリーにアクセスが集まったのがせめてもの救いか。

 "Fateショック"を受けた2009年下半期は、にわかに再起動した萌え4コマ熱に乗じ萌え4コマ感想ブログに実質"転進"、萌え4コマとは(ギャルゲー的)主人公を待ち合わせている女の子たちのふわふわである。などというそれっぽいエントリーを書いてみたものの、肝心のギャルゲーはしばらくまったくプレイできず。さすがにそれはマズいだろと、思うこころがマズいだろ(月森心の俳句)、そのままにしてた"粗相"をかつて絞った雑巾で拭き取るみたいに、「信長の野望 嵐世記」「Canvas2 ~虹色のスケッチ~」そして「いつか、届く、あの空に。」と――

 昔プレイしたギャルゲー(?)を"つまみ食い"している今日この頃、なんとも貧相な「森の路はずれ2009ギャルゲー総決算」でごめんなさい。新作エロゲーをプレイするのに体験版をこなさないのは無謀すぎるご時世だけど、体験版すら食指がN極―N極みたいに億劫がってるこの僕は、果たして2010年健康で不健全な最低限度のエロゲー生活を送れるのかっ!? 就職活動は"就活"、結婚するために"婚活"、朝の時間を活用する"朝活"、日本通算286セーブは"高津"というように今の僕はエロゲーをプレイするために"エロ活"、しなくちゃならないのかもしれないなあ。


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